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道を歩きながら鍵を眺めていた。一週間ぶりだ。鍵を見るのは。
これまでたくさんの思念と戦わされてきた。恋愛感情が生んでしまった思念。親を恨んでいる子供が生んでしまった思念。どれも強烈で、悲しい、救われないような思念ばかりだった。
戦って倒さなければならない強い思念たちを生んだ人々はどれだけ苦しい思いをしているのだろうと考えると胸が締めつけられる。
ふと、周りを見渡すと、視界の端になにか黒い影が映った。そして悲鳴があがる。
思わず駆けていた。危ないから逃げなければならないのに、体は勝手に黒い影に向かっていく。
しばらくして、目の前に映ったのは、傷だらけのルミナス☆ブラックだった。近くには、一人で立ち向かうルミナス☆ブラックを呆然と眺めている人たちがいる。その中には千晴もいた。
私もただの傍観者になった。ルミナス☆ブラックは、苦戦している。真っ黒でヒラヒラしたコスチュームはすでにボロボロだ。そのくせ、思念はほとんどダメージをくらっている様子がない。
ルミナス☆ブラックがまたつきとばされた。もう限界らしい。立ち上がるのも億劫そうに見える。
思念の目はルミナス☆ブラックの近くにいた千晴に向いた。まずい。千晴があのような攻撃をくらったら死んでしまう。
「ルミナス☆ホワイト! メタモルフォーゼ!」
気がついたら叫んでしまっていた。いつもより髪の毛が伸びて、いつも着ない白くてフリフリのワンピースになる。
「時よ止まれ! タイムストップ!」
時間が止まる。この中を動けるのは私とブラックだけだ。
「ホワイト!」
ブラックに名前を呼ばれる。痛みに耐えようとひきつった顔には、私がここにいることへの驚きの表情が混ざっているように見えた。
「癒せ! ヒール!」
ブラックの傷がこれで塞がった。後は弱点であるコアを叩くだけだ。
「時間をかせいで! コアを探す」
「分かった」
時間が動きだす。ブラックがまた思念の中に突っ込んでいく。そこに突っ込んでいったらきっとまた、突き飛ばされる。あまり強いダメージを受けたら、今度こそブラックが戦えなくなってしまう。
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