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「有坂さんが来るまで、席を借りようかしら」 そう言って仁科が腰を下ろした先は、有坂啓子の席だった。 腰を下ろしたことで、控え目に膨らんだ腹部に、自然と愛羅の視線が降りる。 それを察したように仁科は、するりと腹部を撫でた。 「今、5ヶ月よ」 「おめでとうございます」 思わず笑みが零れ出た愛羅に、仁科も微笑んだ。 「さあ、有坂さんが来るまでに、必要なセッティングをしておきましょう」 仁科は、有坂の席から愛羅のパソコンを覗き込み、人事課内だけに共有されているファイルの在りかを説明したり、既に進んでいるプロジェクトの資料などをダウンロードさせたりした。 そうこうしている内に一時間が経過し、有坂啓子が姿を現した。 有坂も快活な女性で、配属が決まってから既に顔を合わせていたから、愛羅は面識がある。 挨拶もそこそこに、三人はミーティングルームへと場所を移すと告げると、人事課長の水谷も同席した。
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