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最近は体調が安定しているらしいが、それは家でいつでも安静を取れる環境にいるからだろう。
毎週診察を受けている医師からも、無理ない範囲での在宅勤務までは制限しないが、満員電車に揺られて都心まで通うことは、止められているらしい。
「私も、自分で希望したんです。自分が働きやすくなるためもありますし、私みたいな人が、もっと増えるといいと思っているんです。がんばりますよ」
仁科に続いて声を上げたのは、有坂だった。
有坂は、愛羅が始業時に挨拶したとき、まだ出勤していなかった。
二児の母である彼女は、時間短縮勤務を採っているからだ。
在宅勤務者と時短勤務者、ガレッジでその数は多くない。
過去に幾人か実施したものはいたが、いずれも長く続かずに退職している。
業務委託や、派遣社員でそうしている者はいるにも関わらず、正社員となると続かないというのは、課題の一つでもあった。
それで、この二人が選ばれたと言っても良い。
象徴的な二人がこのプロジェクトをうまく纏め上げることこそが、ガレッジにとって新しい働き方の一つの道となるだろう。
愛羅は、仁科の在宅勤務が長引いていることと、水谷が人事課長となって人事企画グループから外れることになったため、呼び寄せられた人員だった。
まだ社会人二年目で、実際に勤務していた時間は、それよりも短い。
人事課と言っても庶務のようなことか、もしくは労務関係の事務手続きの見習いでもするのかと思っていた愛羅は面食らったが、期待を寄せる三人の眼差しに、一層気を引き締めた。
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