社長室に、二人きり。 - 後日談 -

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ガレッジでは、入社も異動も、毎月一日と決まっている。

愛羅が、後任の社長室配属者に会ったのは、異動した翌日、二日のことだった。

晴れてガレッジの一員となった新入社員は、一日目は全社員共通の、二日目からはそれぞれに応じた研修を受ける。

社長室という、他に社員がいない部署に配属された新入社員の研修メニューは変則的で、他部署の社員が受ける研修のうち、必要なものだけをピックアップして受けるのだそうだ。

愛羅が入社した時は、社内のルールから始まって、若手社員や事務職を対象にしたビジネス基礎までを叩き込まれた覚えがある。

そうしたものを必要最低限しか受けなくて良いというのは、やはり愛羅よりはずっと優秀で経験もある人だということだろう。

引継ぎ業務のために向かった社長室は、二日ぶりだというのに緊張でノックさえも躊躇われる。

約束の午後一時までは、あと五分。

遅れるわけにはいかないが、早すぎるのもいけない。

ちょうど頃合いかと思ってやって来たのにも関わらず、いざとなると足が竦む。