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予想に反して、社長室には瀬乃山がいたからだ。
窓に向けていた顔が、気配に気づいてこちらを向いた。
立ち尽くす愛羅に目を止め、目元を綻ばせた。
どこかホッとしているような表情に、キュッと胸が軋む。
「おはよう」
「おはようございます」
相変わらず声は小さかったが、どうにか挨拶ができて、愛羅は内心安堵した。
どんな顔をすればいいのやら見当もつかなくて、俯いて自分のデスクに荷物を置き、コートを脱ぐ。
瀬乃山が見ているような気がしたが、確かめることはできずに、隣室にコートを掛けに行った。
昨夜のことは気になるけれど、それはプライベートのこと。
今からは、社員と社長として接しなければならない。
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