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宮武のスマホは完全に故障して、データは全て飛んでおり、データを別所に保管する間もなかったことを確認した。 業務の指示は、瀬乃山から直接する。 瀬乃山の不在時に判断に迷うことがあれば、人事課長に尋ねること。 休暇は、有給休暇で処理するから、今日中に申請書を提出すること。 愛羅には何の咎めもなく、体調不良での休暇となっている。 「ただ……」 そこで初めて言い淀んだ瀬乃山に、愛羅は顔を上げる。 「清香と総務の林には、君が退職したがっていたと言ってしまった」 不安そうな瀬乃山に、愛羅は微笑んでみせた。 「大丈夫です。お二人とも心配してくださったみたいで。まだ連絡していないんですが、私から話します」 瀬乃山は、ホッとしたように頷いた。 相変わらず、感情の見通せない顔だが、至近距離で瞳を見ていれば、伝わるような気がした。
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