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瀬乃山は驚いただろうに、元々ポーカーフェイスがうまいのか、あまり表情は変わらなかった。
しばらくして、ふっと目元を緩めた。
「俺が料理が上手かったなら、作ってやるんだけどな」
「それなら私が……」
「……その提案はとても魅力的だけれど、今週はさすがに君も疲れるだろう。そうだな……小さい静かな店か、個室の店ならどうだろう? それも難しければ、俺の家にデリバリーでも頼むけれど、せっかく初めて二人で食事するんだから、旨いものを食わせたい」
瀬乃山の眼光が甘さを伴って、愛羅の心を揺らす。
震えが恐怖を煽るけれど、この揺れに乗って、凍えきった心を融かしていきたいと決めたはず。
愛羅は勇気を振り絞って、自分の考えを伝えようとする。
「小さいお店は、もしかしたらもっと緊張してしまうかもしれません。個室だったら、たぶん大丈夫です。がんばります」
麗美と隼人と行った店も、半個室で人の視線が気にならないところだった。
愛羅の恐怖心は、対人恐怖症と言ってもいいものだったが、何が気になるのかは人によって様々だ。
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