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スーツは先ほどまで着ていたのだから、まあいいとしても、ネクタイまできっちり締めて出てきた瀬乃山に、愛羅は目を丸くした。 「送っていく」 「ありがとうございます。でも、なんでスーツなんですか?」 「麗美さんに挨拶しないと」 「えっ!? お姉ちゃんに!?」 「心配かけているんだから、当たり前だろう? きちんとお話ししないと」 慌てふためく愛羅を促して自分の車に乗せ、瀬乃山は平然とそう言う。 確かに、今朝までは退職するつもりでいたのだ。 それを覆して勤務を続けるのだから、麗美には説明がいる。 とはいえ、こんな展開は、愛羅だってまだ呑み込めずにいるのだ。 急に夜半に自宅に来られても、愛羅も麗美も困ってしまう。 「ありがとうございます。でも、まずは私から話しておきますね」 「しかし……」 「もう夜も遅いですから」 「……じゃあ、今週末にでも、時間をいただけるように言ってもらえないか?」
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