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愛羅から話すと言っていたが、旧知の瀬乃山からも、個人的に話しておきたかった。
けれど、職場で話せる内容ではないかと悩む。
「……焼肉、いつがいい?」
二人黙ってインスタントコーヒーを啜っていると、ぽつりと清香が言った。
いつも問答無用で誘ってくる言い方とは違うことが引っかかって、瀬乃山は頭を巡らし、ああと思い出す。
「俺が奢る。金曜は?」
失恋したら、焼肉を奢ってあげると、清香が言ったのだ。
失恋はせずに済んだのだし、それは清香のお蔭でもあるから、むしろ瀬乃山が馳走すべきだろう。
焼肉を食べさせながら、きちんと清香に話ができれば、むしろ都合がいい。
「え、いいよ。本当に奢ってあげるから」
それなのに清香は、珍しく本気で断る。
いつもたかるように奢らせているくせにどうしたのかと考えて、そうかと気付く。
ひとまず出勤を再開したという挨拶だけをしたと言う愛羅が、瀬乃山と付き合うことになったと話す時間があったはずがないし、そもそも職場でする話ではない。
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