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「そっか……そうだよね。ごめん」
「ううん。あ、だから、このことは役員と人事課長だけしか知らないから、他の人には言わないでもらってもいい?」
「うん、もちろん、誰にも言わない。……でも、私、知っちゃっていいのかな? もう遅いけど」
慌てる花蓮に、愛羅は微笑む。
こういう屈託がなく、ストレートな花蓮が好きだった。
「大丈夫。社長に、花蓮さんには言っていいって言われたから」
「へえ」
総務部の平社員である花蓮は、瀬乃山と直接話したことは殆どない。
愛羅が休んでいる間、給湯室で話したのが一番長い会話だった。
だから、今日のこの席も、自分が参加していいものかと悩んだのだが、先の会話を思い出してやって来たのだった。
愛羅の話を聞いて、口止め料のつもりなのかもしれないと思う。
けれど、愛羅が微笑んで俯いた仕草に、ちょっとだけ引っかかる。
給湯室で花蓮を問い詰めた、瀬乃山の鬼気迫る様子にも、感づくものがあった。
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