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深く頭を下げる。
清香は平然と、花蓮は息を呑んで、露わになったつむじを見つめる視線を感じた。
まだ何も載せられていない焼き網から、熱が伝わる。
静かになった空間に、換気扇の音が響いていた。
「……今の言葉、忘れるんじゃないわよ」
ぽつりと清香が言葉を落とす。
「任せてください」
花蓮が力強くそう告げて、ようやく瀬乃山は体を起こした。
もう一度二人と視線を合わせ、また深々と頭を下げた。
つんつん、つんつんと、ずっと瀬乃山のシャツを引っ張り続ける愛羅に苦笑して、顔を上げる。
泣きそうな顔をしている愛羅の頭を撫でてやると、愛羅は困ったように清香と花蓮を見上げる。
清香と花蓮も、もう笑っていた。
「かわいい愛ちゃんを独占するなんて、ずるいっ!」
「だから、何なんだよ、それは」
気心知れた瀬乃山と清香の掛け合いに、愛羅と花蓮は笑い出す。
ようやくやって来た肉の皿は、瀬乃山が受け取り、迷いなくトングを取る。
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