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「社長、私が焼きます」
「いや、今日は俺にやらせてくれ」
慌てる愛羅と花蓮に、清香は当然ね、とのたまう。
「今日は一番高いお肉をいただこうっ。前から一度食べてみたいと思っていたのよね」
「好きにしろ」
「やったぁ。花蓮ちゃん、何がいい? お酒飲めるくち?」
清香と花蓮がわいわいと騒ぎ出す横で、瀬乃山は肉を焼き網に置き終え、胸ポケットから名刺とボールペンを取り出す。
さらさらと何かを書きつけ、花蓮に向かって差し出した。
「俺の個人の携帯番号。何かあったら、いつでも連絡してくれ」
「っ……はい」
さすがに花蓮も驚いた。
社長のプライベートの携帯番号なんて、知っている人はごく一部だろう。
躊躇われたが、瀬乃山が愛羅のことを考えてのことだと知っている。
非公表の事情を明かし、頭まで下げた瀬乃山の誠意に、花蓮も少し気を許して、それを受け取った。
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