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タクシー代を愛羅に無理矢理握らせてから運転手に合図し、ドアを閉めさせる。
札を握り締めながら、困ったように窓越しに振り仰ぐ愛羅に手を振って見送る。
呆れたように観察していた清香から気まずく目を逸らして、もう一台タクシーを探した。
「溺愛ね」
「……うるさい」
「社内では、注意しなさいね」
「分かってる」
なかなかタクシーが捕まらなかったので、清香に同乗して瀬乃山も乗り込む。
清香を先に送り、それから自宅へ向かっていると、スマホが鳴る。
花蓮から、今日の礼と、花蓮の連絡先を知らせるメッセージ。
清香から、部屋に入ったという報告。
これは昔、清香が泥酔していたときに心配した瀬乃山が、部屋に入った後に必ず連絡しろと言ってからの習慣だ。
瀬乃山は、一度認識したリスクに対しては、結構心配性だという自覚がある。
それから最後に、愛羅から今日の礼と共に、明日の都合を訊くメッセージが届いて、瀬乃山は一人満足して微笑んだ。
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