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「私も前の会社で異動になったとき、切なかったなぁ。なんだか周りの人からいらないって言われたみたいに思っちゃって」 「……花蓮さんでも?」 しばらくぶりに、相槌以外の言葉を発した愛羅に、花蓮は笑みを見せる。 「清香さんも言ったけれど、社長に限ってそんなこと絶対ないからね! 異動って緊張するし、希望していなかったんなら行きたくないだろうけれど、いいことも絶対にあるから」 力強く言った花蓮に、愛羅は曖昧に頷いた。 「部屋は別だけれど、総務課の隣になるしね。お昼、一緒に行きやすくなるね」 「はい」 花蓮が励ますように言ってくれて、愛羅はほんの少し心が軽くなった。 花蓮の言うとおり、人事課と総務課は隣合わせの部屋だ。 通路が別になっている社長室より、顔を合わせる機会も多いだろう。 心を許している人が、一人でも傍にいるということは、心強い。
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