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遅い時間に姿を現した瀬乃山は、三人の女性に付き合って、一杯だけ酒を空けた。
話題は他愛の無いものばかりで、愛羅が肩の力を抜いて笑っていることが何より嬉しかった。
帰り際、愛羅が席を外した隙に、清香から異動のことをもっとフォローするように言われた。
清香か花蓮から、そう言われることは予想していたが、少し意外に感じてしまったのは、思いの外、愛羅が楽しそうにしていたからかもしれない。
連れ去るように瀬乃山の自宅に連れ帰っても、愛羅はまだ賑やかな夜の気配を纏わせていて、いつもよりも明るく見えた。
酒のせいで火照らせたままの頬に手を当てれば、恥ずかしそうに、でも嬉しそうに微笑む。
「……俺といられなくなるの、寂しい?」
一瞬で愛羅の顔が、燃え上がるように火照る。
俯いてしまった愛羅からは、肯定も否定も得られない。
しばらく待ったが諦めて、いや、我慢が効かずに細い体を抱き締める。
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