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愛羅は、細い。
背も小さく、髪も短い。
幼いのは容姿だけでなく、実際まだ年若いのだ。
それを忘れないようにしなければならないと、瀬乃山は時おり言い聞かせなければならない。
頬に手を掛けて上向かせ、親指でそっと瞳の下を拭う。
こけていた頬はふっくらとした丸みを取り戻し、常に目の下にあった薄暗い隈は消え去った。
けれど、あの姿を瀬乃山は忘れることがないだろう。
もう決して苦しませたくなくて、ずっと手の内で囲っておくことで守れるのならば、今この瞬間からずっとそうしていたいのに、少女のようなこの女性は、自分の力で立ち上がりたいと、美しい瞳を天に向けるのだ。
「俺は寂しいよ」
だからせめて、大空へと飛び去ってしまわぬようにと、つまらぬ枷を落とす。
瀬乃山の声に、丸い瞳をさらに見開いた愛羅に、知らず傷つく。
この程度で、驚いたりしないでほしい。
愛していると何度も伝えているのに、きっと彼女にはまだ、届いていない。
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