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「君は、寂しくないのか」
重ねて問えば、潤んだ瞳が揺れながらも、じっと瀬乃山を見つめる。
その奥に宿る光を感知して、ようやく人心地がつき、吐き出した息はすっかり色づいてしまっていた。
「俺は良かったと思っている」
ビクンと揺れる瞳は、傷ついたことを表しているのだろうか。
あれだけ傷つけていたのに、仕返しのように簡単にまた傷つけてしまう。
君が信じてくれないから悪いんだとばかりに、愛羅のせいにしたくなるのは、仕方ないと思う。
きっと愛羅は、こんなにも溢れ出ていると言うのに、瀬乃山の想いを理解していないに違いないのだから。
ソファに腰を下ろした瀬乃山は、額を突き合わせ、向かい合わせに抱きかかえて愛羅を膝に乗せる。
羞恥からか躊躇しているのは容易に見て取れるが、無視して矢鱈にキスを落とせば、やがて諦めてくれるのは分かっていた。
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