―少年時代―

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午前三時。 ふと目が覚める。と同時に激しい頭痛が僕を襲った。 今までに無いくらいの痛みだ。僕は布団の上でもがく。 「な…なんなんだ…!?くッ」 ハルが死んでからというもの、たまに頭や胸が痛くなることはあった。が、今回のはそれと違う。突き刺さる痛みが頭のちょうど真ん中辺りで神経を震わせる。 「こ…これはヤバいかもな…うぅ…」 もうろうとする意識の中、僕は先生の元へ向かおうと部屋を出た。 ひた、ひたと渡り廊下に足音が響く。 そこはコンクリートで出来た白い壁と灰色のタイルで統一されていて、窓は無い。 その三十メートルはある廊下は緩やかな曲線を描いていた。ちょうど、端と端が見えないくらい。 何度か行ったことのある病院の廊下と同じ無機質な印象を受ける。僕は、昼間でも薄暗いそこはあまり通らない。気味が悪いから。 職員室の扉の前に立つ。そして頭痛薬を取りに中に入った。 さっきよりは治まったものの、このまま微弱な頭痛が続くのは鬱陶しい。 五錠くらい頂くつもりでいた。だが… そこで心臓が少し跳ね上がる。 「うわっ!?」 「わぁっ!!」 真っ暗の職員室にいたのは懐中電灯を片手にした中谷先生であった。僕はスイッチを押して明かりを点けた。 「……中谷先生?こんな夜中に何してんの?」 「…なんだ貴哉か。ったく…。ビックリさせんな!それにお前なんでこんな時間に職員室に来るんだ!!」 なかなか強めの拳骨が脳天を直撃した。僕は頭が痛いというのに。 「痛ぇッ!…っなにすんだよ!頭痛いのに!」 「あ、そうなのか」 すまんすまんと平謝りする中谷先生。 「ほら、薬箱。適当に持ってけ。サービスだ」 「…ちぇッ。調子いいよなー…」 中谷先生はスポーツも出来るし、主に文学系の授業を受け持っている。文武両道だし、それでもって兄貴肌。 ハルが死んだ時、僕を誰よりも心配してくれたのはこの中谷先生だった。僕は尊敬している。 頭痛薬をいくらか取り出すと、ふと疑問が浮かんだ。 「…つーか先生こそ職員室で何やってたのさ。窃盗?」 「アホ。明日市内で会議があるからそのための書類を探してたんだよ」 「…真っ暗の中で?」 「ん?いやな、電気点けると俺たちの寝てる部屋まで明かりが届くんだよ。自分寝てる時にされたらそんなんうざったいだろ」 「じゃあ今明かり届いてるね。電気点けちゃったし」
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