10人が本棚に入れています
本棚に追加
「あぁそうだ。だから邪魔するな!さっさと寝ろほらほら」
「あー押さないで押さないで!分かったよ。じゃあおやすみ先生」
ぐいぐい背中を押されて、僕は廊下に出された。そして職員室から離れた生活エリアの洗面室に向かう。この時すでに頭痛は治まっていたが、念のため飲むことにした。
「ふぁ~あ…眠い…」
コップに水を入れ、薬を一気に流し込む。違和感が喉の辺りで踊った。
水をもう二飲みくらいしてから自室へ戻ろうとした時、職員室から「ぐわっ」という声と共に何かが崩れる音がした。
「…ったく暗い部屋で探し物なんかするからだ」
一応心配なので様子を見に行く。
すると再び酷い頭痛が僕を襲った。さっきのより酷い。視界がぐにゃりと曲がった。
「うぅっ…痛ッ……なんだってんだよクソッ!」
ふらふらとした足取りで職員室の扉を開ける。
「せ…先生?大丈夫か?」
明かりを点けると、そこには棚の上にあった段ボールが直撃したのだろう、気を失っている中谷先生がいた。
「三箱も落ちてきてるじゃん…ん?」
先生の頭部に覆い被さっている段ボールを取ってあげようとしゃがみ込んだその時、棚下の床に何かを引きずった後の様なものを見つけた。
「これって…」
僕は改めて棚を見る。何の変哲もない、書類やファイルがいっぱいに詰め込まれた灰色の安っぽい棚だ。
「まさか…な」
僕は半信半疑で棚を横に押してみた。結構…いやかなり重い。
頭痛は心拍数が上がると痛みを増す。それを堪えて、力いっぱいに押した。
かすかに動く棚。
「ふぅ…ふぅ…重い…うぉおぉおっ!」
壁の下に何かが見える。
出る力を振り絞り、僕は思い切り棚を押した。
「はぁっはぁっ…こりゃ……ハシゴか?なんでこんな…」
改築されたばかりの真新しい壁が下から一メートルくり抜かれた形で、古くさいハシゴが異様な雰囲気を醸し出している。
くり抜いたと言うより、ハシゴを残したといった方が良いかもしれない。
ナガブチさんは開かずの扉と言っていた。だが目の前に現れたのはハシゴ。さっき僕が見付けたのは鍵だ。糸は繋らない。
「まぁ…あれこれ考えるより行ってみた方が早いか…あぁ頭痛い…」
念のため部屋の明かりを消す。誰かに来られたら厄介だ。中谷先生には可哀相だがもうちょっと寝てもらおう。懐中電灯を借りて、僕はハシゴを降りた。
三メートル。高さにして約一階分だろうか。
確かに、地下はあった。
最初のコメントを投稿しよう!