―少年時代―

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「あぁそうだ。だから邪魔するな!さっさと寝ろほらほら」 「あー押さないで押さないで!分かったよ。じゃあおやすみ先生」 ぐいぐい背中を押されて、僕は廊下に出された。そして職員室から離れた生活エリアの洗面室に向かう。この時すでに頭痛は治まっていたが、念のため飲むことにした。 「ふぁ~あ…眠い…」 コップに水を入れ、薬を一気に流し込む。違和感が喉の辺りで踊った。 水をもう二飲みくらいしてから自室へ戻ろうとした時、職員室から「ぐわっ」という声と共に何かが崩れる音がした。 「…ったく暗い部屋で探し物なんかするからだ」 一応心配なので様子を見に行く。 すると再び酷い頭痛が僕を襲った。さっきのより酷い。視界がぐにゃりと曲がった。 「うぅっ…痛ッ……なんだってんだよクソッ!」 ふらふらとした足取りで職員室の扉を開ける。 「せ…先生?大丈夫か?」 明かりを点けると、そこには棚の上にあった段ボールが直撃したのだろう、気を失っている中谷先生がいた。 「三箱も落ちてきてるじゃん…ん?」 先生の頭部に覆い被さっている段ボールを取ってあげようとしゃがみ込んだその時、棚下の床に何かを引きずった後の様なものを見つけた。 「これって…」 僕は改めて棚を見る。何の変哲もない、書類やファイルがいっぱいに詰め込まれた灰色の安っぽい棚だ。 「まさか…な」 僕は半信半疑で棚を横に押してみた。結構…いやかなり重い。 頭痛は心拍数が上がると痛みを増す。それを堪えて、力いっぱいに押した。 かすかに動く棚。 「ふぅ…ふぅ…重い…うぉおぉおっ!」 壁の下に何かが見える。 出る力を振り絞り、僕は思い切り棚を押した。 「はぁっはぁっ…こりゃ……ハシゴか?なんでこんな…」 改築されたばかりの真新しい壁が下から一メートルくり抜かれた形で、古くさいハシゴが異様な雰囲気を醸し出している。 くり抜いたと言うより、ハシゴを残したといった方が良いかもしれない。 ナガブチさんは開かずの扉と言っていた。だが目の前に現れたのはハシゴ。さっき僕が見付けたのは鍵だ。糸は繋らない。 「まぁ…あれこれ考えるより行ってみた方が早いか…あぁ頭痛い…」 念のため部屋の明かりを消す。誰かに来られたら厄介だ。中谷先生には可哀相だがもうちょっと寝てもらおう。懐中電灯を借りて、僕はハシゴを降りた。 三メートル。高さにして約一階分だろうか。 確かに、地下はあった。
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