叩いた扉のその先に

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 甲高い声を発したのは、お婆さんの隣に座っていた小太りの男の人だった。その人は怒った様子で立ち上がり、私を指差す。しかし、立ち上がったその人が思っていた以上に小柄だった為、怖くもなんともなかった。 「女王様の、お花…?」  そんなもの、折った覚えはもちろんなかった。それがどんな花で、何色なのかも私は知らない。でたらめだ、この人たちはでたらめを言っている。 「すっとぼけた顔しても無駄だよ。ワンピースの右ポケットに手を入れてごらん」  そう言って、私を睨みつけていたのは小太りの男の人とは反対側の、お婆さんの隣に座っていた女の人だった。眼鏡をかけていても、その眼光はちっとも鈍らない。  自分が、ワンピースを着ていることに、その時気が付いた。言われた通り右ポケットに手をいれると、指先に何か触れた。嫌な予感がして、それをつまんで恐る恐るポケットから取り出すと、真っ赤な薔薇の花びらが姿を現した。  その瞬間、さっきまで声を発していた三人の他に、私を囲むようにして座っていた残りの三人も一斉に声を上げた。  それぞれ何を言っているのかは全く聞き取れない。けれど、私のことを悪く言っていることだけは感じ取ることが出来た。
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