第一章 ゴーレム理論

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「いやぁ、やっぱりおばさんのお茶は最高っすねぇ!」 柚木一志は手放しの賛辞を述べ 「あらそう?”おばさん”って呼び方以外は、ありがと。」 志村道子が一抹の不満を顔と言葉に載せて、それでも微笑む。 「でも、ほんとにおいしいです!これ!」 只野夏南が、満面の喜色で声を挙げる。 「ふふふ。古い魔道書にあった不老長寿のお薬をアレンジしたんだけど。お気に召したなら、お代わりもあるわよ?」 目の前の若いカップルを満足させた事に、道子はご満悦である。 が。 「お前等なぁ。」 二人と同じテーブルに就き、古い学会誌をめくっていた志村家長男、志村雅博は、その三人と表情を異にして呆れ顔だ。 「うちは喫茶店じゃねーんだぞ。毎日毎日、茶ぁ飲みに来やがって。」 「言ってくれるな、雅博。中学生カップルの悲しさ、デート資金にも限りがあってだな。」 「だからってうちにずかずか上がり込むってどう言う理屈だよ。」 「だってマジ美味いんだもん。ここのお茶。」 「あ、あの・・・」 夏南が恐ず恐ずと肩を竦め、カップを置く。 「ご、ご迷惑でしたら・・・」 「あ、いや、夏南ちゃんはいいんだよ、夏南ちゃんは!ってか、こ、こいつがあんまり無遠慮なもんだからさぁ!ホント!別に!」 「お。そうか気にしてないか。じゃあ、おば・・・道子さん。もう一杯・・・」 「お前はちょっとは慎みと言う物を知れ一志ぃっ!」 そんなてんやわんやの中。 「なーにお客に気ぃ遣わせてんのよ、マサ。」 キッチンへと続く暖簾を持ち上げ、大田魅沙が顔を覗かせる。 道子のお茶煎れの助手を務めているらしい。 「夏南ちゃん、ほんと気にしなくていいんだからね!」 「・・・お前も大概、我が物顔だよな。」 雅博の口から、思わず溜息が漏れる。 「あら、いいじゃない?」 道子がころころと笑いつつ、魅沙の身を抱き締める。 「近い将来、魅沙ちゃんはうちの娘になるんだもんねー。」 「はぁ!?」 がたん、と。 顔を朱に染め、雅博が立ち上がる。 「カ、カーチャン!いきなり何を・・・!」 「あら?やなの?マサ。」 「・・・え?」 魅沙に射竦められ、雅博は呆けてしまった。
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