0人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「いやぁ、やっぱりおばさんのお茶は最高っすねぇ!」
柚木一志は手放しの賛辞を述べ
「あらそう?”おばさん”って呼び方以外は、ありがと。」
志村道子が一抹の不満を顔と言葉に載せて、それでも微笑む。
「でも、ほんとにおいしいです!これ!」
只野夏南が、満面の喜色で声を挙げる。
「ふふふ。古い魔道書にあった不老長寿のお薬をアレンジしたんだけど。お気に召したなら、お代わりもあるわよ?」
目の前の若いカップルを満足させた事に、道子はご満悦である。
が。
「お前等なぁ。」
二人と同じテーブルに就き、古い学会誌をめくっていた志村家長男、志村雅博は、その三人と表情を異にして呆れ顔だ。
「うちは喫茶店じゃねーんだぞ。毎日毎日、茶ぁ飲みに来やがって。」
「言ってくれるな、雅博。中学生カップルの悲しさ、デート資金にも限りがあってだな。」
「だからってうちにずかずか上がり込むってどう言う理屈だよ。」
「だってマジ美味いんだもん。ここのお茶。」
「あ、あの・・・」
夏南が恐ず恐ずと肩を竦め、カップを置く。
「ご、ご迷惑でしたら・・・」
「あ、いや、夏南ちゃんはいいんだよ、夏南ちゃんは!ってか、こ、こいつがあんまり無遠慮なもんだからさぁ!ホント!別に!」
「お。そうか気にしてないか。じゃあ、おば・・・道子さん。もう一杯・・・」
「お前はちょっとは慎みと言う物を知れ一志ぃっ!」
そんなてんやわんやの中。
「なーにお客に気ぃ遣わせてんのよ、マサ。」
キッチンへと続く暖簾を持ち上げ、大田魅沙が顔を覗かせる。
道子のお茶煎れの助手を務めているらしい。
「夏南ちゃん、ほんと気にしなくていいんだからね!」
「・・・お前も大概、我が物顔だよな。」
雅博の口から、思わず溜息が漏れる。
「あら、いいじゃない?」
道子がころころと笑いつつ、魅沙の身を抱き締める。
「近い将来、魅沙ちゃんはうちの娘になるんだもんねー。」
「はぁ!?」
がたん、と。
顔を朱に染め、雅博が立ち上がる。
「カ、カーチャン!いきなり何を・・・!」
「あら?やなの?マサ。」
「・・・え?」
魅沙に射竦められ、雅博は呆けてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!