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「ふ~ん。へぇ~。そう。私とは遊びだったんだ。そ~かそ~かぁ。」
「だ、誰もそんな事言ってねぇじゃん!」
魅沙は少々からかう程度の心づもりだが、雅博は本気で狼狽している。
「大体さぁ~。」
その反応が愉快だった為、魅沙は少々悪乗りし始めた。
「毎日デート、なんて羨ましいなぁ~。私。」
「う・・・」
「前に一緒にお出掛けしたのって、何時だっけぇ?雅博く~ん?」
「それは・・・」
「今日だって、その本読みたいって言って、寄り道もせずに真っ直ぐ帰って来ちゃったしさぁ~。」
「・・・」
「あ~あ。せめて放課後のお買い物くらい、付き合って欲しかったなぁ~。」
「・・・そうだよな。」
「へ!?」
項垂れ始めた雅博が、更に深く、その頭を落とした。
「ごめん。魅沙。」
「あ・・・ち、ちょっと、雅博!」
「お前の気持ち、考えてなかった。ほんとごめん。」
「え!?い、いやそのっ!」
思い掛けぬ、素直な謝罪。
今度は魅沙が慌てる番だった。
「ち、違うのっ!べ、別にいいのっ!」
「でもさ。」
「わ、私、夢に向かって頑張ってる雅博見てるの、結構好きだしっ!」
「え?」
「あ、え!?そ、そうじゃない!そうじゃなくてっ!」
その果てに漏れ出てしまった本音に、魅沙自身が恐慌状態に陥る。
「・・・でもそれって、解ります。」
そこに言葉を挟んだのは、夏南だった。
「私達、デートって言っても、一志先輩のトレーニングに付き合わされるだけなんですよ?」
「あー・・・うん。」
一志はそうした自分の都合で振り回している事にばつの悪い思いを抱えてるらしく、ぼりぼりと頭を掻いている。
「でも、そうやって自分を高めようと真剣になってる姿って、結構ドキドキさせられちゃったり。」
「ちょっ!お、おまっ!ば、馬鹿っ!な、何言ってんだよっ!」
熱っぽい視線を向けられ、今度は一志が顔を真っ赤にして無目的な手振りを現す。
まるで、狼狽の持ち回りだ。
「と、ところで雅博っ!」
話を逸らして誤魔化そうと言うのだろう。
一志は突然、矛先を変えた。
「さっきから何読んでんだよっ!何か面白い事でも書いてあんのかっ!?」
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