第一章 ゴーレム理論

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嗚呼。 この世は地獄だ。 理不尽で構成された、この世界。 その理不尽の最たる物。 それが”死”だ。 どれ程愛していても どれ程大事であっても 想いを伝え切る術も無いままに ”死”は必ず訪れる。 ”死”は必ず二人を分かつ。 それは何故だ。 それを回避する法を 人は有史以降に繰り返していると言うのに。 何故、それが果たされる事無く 今の世があるのだ。 もしその法が確立されていたのならば 私は彼女と 愛しい人と 永遠の時を謳歌する事が出来ただろうに。 何故死は訪れる。 何故死は避け得ない。 何故死は与えられてしまうのだ。 そんな誰一人望まぬ物を 与えるのは誰だ。 もしそれが ”神”等と言う存在なのだとしたら 私はそれをも葬ろう。 ”君”を取り戻す為に。 さぁ。 もうすぐだ。 もうすぐ、出来る。 ”君”を再び。 今度は離さぬ為に。 もう少し。 もう少しだよ。 あ さ こ 「雅博?おい雅博!」 「・・・!」 「どうしたんだよ?お前。」 「え、あ・・・いや・・・」 「熱でもあんのか?」 「やめろよ気持ち悪い。」 互いの額を合わせ掛けた一志を押し退け、雅博は先程感じた、得体の知れない”モノ”を思い返した。 『何だったんだ?今の・・・』 思念。 念波。 情念。 自分の裡に叩き付けられた、その”心の形”。 それに名前を付けるとするならば。 或いは、祈り。 或いは、執念。 或いは、妄念。 いや。 最も相応しい名称は。 『”呪詛”・・・』 「マジ、どうしたの?雅博。」 魅沙が心配気な顔を寄せて来る。 「だ、大丈夫。大丈夫だよ。」 今迄に、幾度かゼロ距離まで至った事はある物の、流石に動悸が速くなるのは禁じ得ない。 「いや大丈夫、じゃなくて、さ。」 ”どうしたのか”。 魅沙は、その応えこそを求めているのだ。 「う、うん・・・」 ふ、と。 手元の冊子に目を落とす。 あの、禍々しい思念が。 ”そこ”から叩き付けられた、と言う事は、疑い様が無い。 「ちょっと、これが・・・可笑しな内容だったもんでね・・・」
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