限界だということ

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もう限界だった。 心も体も、精神的にも――私は限界だった。 四月から新入社員として飲食店で働き始め、三ヶ月経ったものの、私はいまだに迷っていた。 元々ここで働くことに疑問があったし、本当にここで働いてやっていけるのかどうか、不安だった。 両親の心配が見事に当たり、私は入社から一週間で精神的に疲れていた。 慣れない職場環境に加え、人間関係のおぞましさを目の当たりにし、長時間の拘束も私の精神を蝕む。 多くの影口が飛び交い、その中にいつ私自身のことが入ってくるのかわからない不安から、いつしか職場の人たちの顔色を伺い、警戒する人間になっていた。 そのことに気付いたのは上司から言われた一言。 『自分の殻に閉じ籠っているんじゃない。』 あぁ、他人から見たら私はそう見えるのか、と気付かされた瞬間だった。 しかし、今更警戒を解くことは出来ず、私はそのままズルズルと殻に閉じ籠り、警戒するばかり。 毎日毎日来る日も来る日も上司に叱られ、挙げ句の果てには『テメェ』とまで呼ばれ続ける日々を過ごしたある日、私は限界を迎えた。 発端は些細なことであり、いつもの叱られる内容と変化は特になかった。 だけど、私には十分な変化を与えられた一言だったと思う。 そう、心も体も、精神的にも限界の私には一言で最早十分だったのだ。
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