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目が覚めたのはチャイムの音だった。無視して眠ろうかと思ったのだが何度も鳴るので、僕は怠い体を無理矢理起こして玄関を開ける。
「よー」
「は、春奈(はるな)!?」
僕は素っ頓狂な声を上げた。そこにいたのは僕の彼女である篠田 春奈(しのだ はるな)だった。彼女は僕のことを心配して、時折こうやってくるのだ。だが、今日は何も連絡がなかったから、かなり動揺した。
「相変わらず、マイペースな生活をしているねー」
春奈が玄関から僕の暗い部屋を覗き込む。僕はそれを隠すように、彼女の視線を自分の体で遮った。
「それで、どうしたの?」
「今日さー」
春奈が目を輝かした。
「大学の講義じゃん? 怜音(れおん)も来るでしょ?」
飯島 礼音(いいじま れおん)そんな派手なのが僕の名前だ。
それより、確かに春奈の言う通りに僕は大学の講義に参加していない。
だが、どうして急にそんなことを言い出したのか。一概の疑問を覚えながら、彼女にせがまれた僕は大学の講義をする道具と服装に着替え、春奈とともに大学に向かいだした。
梅雨のねっとりとした体にまつわりつく風が僕らの間を駆け抜けた。マンションの階段を一段ずつ降りる。僕と春奈は大学の講義や先生の愚痴、学食について話していた。大学の講義はさほど進んでいないらしい。体調がすぐれないらしい先生も自習が多い、テストがどうなるのかしらと春奈は愚痴をこぼしていた。
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