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立ってるのが奇跡だった。
眼に映る物は全てが天地逆さまだった。
『よーし、じゃあ、女の子からご褒美のチュウだ!誰行くの?』
『えー、やだ!本気だったの?気持ち悪いじゃん!』
女の子は全員がお互いを譲り合いながら嫌がっていた。
そんな事はもはや関係ない、足もガクガクしてきて立ってるのも必死だった。
『じゃあ、言い出しっぺがすることね。』
北野の一言に女の子は驚いた様子だった。
『ええ、やだー。でも、私が言ったからな。しょうがないなあ。』
女の子が立ち上がると、恥ずかしそうに俺の隣にきた。
『じゃあ、やりまーす。なに?ちょっと吐かないでよ。てか目くらいつむってよ!』
もう俺には何かを考える余裕は無かった。
目をつむると、カウントダウンが始まった。
『5秒前、4、3、2、1、0・・・チュ。』
瞬間、暖かく柔らかい感触が俺の頬っぺたに伝わった。
『イェーイ!おめでとう!初めてのチュウの感想は?』
『えー!何?初めてなの?』
『やだ?まっかっかよ!完全に意識してんじゃない?』
『えー、やめてよ!ストーカーとかにならないでよ。』
『いやいや、こいつそんな勇気ないから!ほら、いつまで立ってんだ!』
『感想は?』
『言えよ感想ぐらい。もしかして立ってたりして!』
『えー、キモーイ。』
『やだやだー。』
『ていうか今日一言も喋ってなくない。』
『ほんとだ!ほら、何か言えよ。』
『早く~。』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『・・・・・・・・・バルス』
いやいや、消えてなくならないから。
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