第1章

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八月十三日午前六時。 大村レオの日常は非常に規則正しい。 まずは洗顔。冷たい水を出し、思いっきり顔にかける。これで目覚ましは完璧だ。 次に朝食。急いでフライパンを出して、目玉焼きを作る。そして、同時進行で焼いていたパンに、黄身が程よく固まった目玉焼きを乗せる。 ここで僕は訴えたい。 世間は「目玉焼きには醤油」、「塩コショウでしょう」などという意見が飛び交う。しかし、私はおすすめしたい。最強は「目玉焼きとパンとバニラエッセンス」で決まりだ! いつものようにバニラエッセンスを冷蔵庫から取り出し、さっとひとふり。かぐわしいバニラの香りが漂う。 「いただきます」 二枚の「バニラ目玉焼きトースト」を前に手を合わせる。ありがとう、バニラ。 優雅な朝食のひと時を過ごしていると充電してある、スマートフォンが震えた。いま話題のSNSアプリ、「row」の音だ。 「ん? 誰からだ? ……ああ、吉田かよ」 画面を見に行って少し悲しくなる。吉田は同じクラスだ。もちろん、男である。 「なになに……。あ? 『今日、転入生が来る』? なんで今の時期に……」 今日は木曜日。なんて微妙な日に転入生……。 「おっと、まずいまずい。時間がなくなっちまう。『そうなのか。女子だといいな』っと。」 僕は「バニラ目玉焼きトースト」を急いで食べ切り、歯磨きをする。 そして、制服に着替えてカバンの中身を最終確認する。 「よし。行ってきます!」 二階に叫ぶと 「いってらっしゃーい」 と弱々しい声が帰ってきた。この声の主こそ我が家の最高権力者、大村七海だ。女だ。僕の母だ。漫画家らしい。よくわからない。 こうして僕は、遅れるはずのない学校に小走りで向かった。 学校は家の門を出ると横断歩道を渡った目の前にある。
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