第2章

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「よぉ、吉田」 僕は右手を上げながら、吉田に近づく。 「…はよ」 彼が「おはよ」と言おうとしていることはわかった。ただ、これを文字に起こすと、どうしても「はよせい」って関西弁みたいな感じがする。もちろん、イントネーションが違うので実際にはそう聞こえないけど。 「…あ、大村」 どう聞いても、「あ、大村」としか聞こえない。声が小さいのだ、こいつは。しかし、幼馴染――といっても中学性になってからの付き合い――の俺ならばわかる。こいつは「なあ、大村様」と言ったのだ。 「あ、あのさ。今日の数学は、怒られると思う?」 突然授業の話なんてするなよ、吉田。今は「目玉焼きバニラトースト」の余韻を楽しむ大事な時間だぞ。 しかし、我が親友(僕のほうが立場が上)の言葉を無視するのは、余りにも心が痛む。答えてやろう。 「数学かぁ……。この頃怒られっぱなしだもんな」 この前は田中が授業中にノートのとり方を間違えていたからって一時間お説教食らったし、その次の日は青島さんが居眠りをしていたからって「もう授業はやらん」って言われた……。 「また怒られるかも……うっ」 突然、頭が痛くなった。痺れるような痛みが脳を駆け巡る。 映像が見えた。数学教師が僕たちに笑顔で話している。生徒はというと……苦笑いだ。これはオヤジギャグの嵐を表しているに違いない。 「どうした?」 吉田が聞いてくる。いつになく声がはっきりとしている。 「お、おう。大丈夫だ。問題ない」 今見えた映像はなんだったのだろう。数学教師? 「大丈夫ならいいけど……。やっぱ怒られるよな。だよな」 そうだ。数学教師といえば、怒られるかもしれないって話していたんだったな。もしかしてだけど……。
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