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我ながら、おかしな事をしたと思う。男女合わせて10数人に囲まれた、クラス単位でいじめられている子に話し掛けるなど。
あの時の私はどうかしていたのだ。あんな奴の声など聞いたことはないし、聞きたいとも思わないのに。
あいつが居なければ私がやられていたのだと、思わなかったわけではないのだが、今まで何とも思わなかったはず。
何を今更。
今もそうだが、それ以来彼奴にストーカーまがいの事をされている。なにか言いたいなら、堂々と言いに来ればいいのに。
イライラする。
だからといって、こちらから話しかけに行くのは嫌だ。声を出すのすら面倒だ。私が、話すことが好きな女なら、もう少し友達も出来ただろうに。
あんな奴に話しかけるなど、奇っ怪な出来事も怒らなかったろうに。
休み時間。後ろから足音がするので、癖で身体がこわばった。歩いてきたのは彼奴だ。
言いにくそうに目をそらして、ぎゅっと瞑ると、決心したみたいにこちらを向いて「ありがとう」とだけ言って、何処かに行った。
ただお礼を言うためだけに後をついてまわっていたのかと。
「ばっかみたい」
ため息混じりに呟くと机に突っ伏した。
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