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窓から見える山が赤く色づき始めて、廊下を歩くわたしの横を涼しい風が通り抜けた。
その日、図書室へ入ったわたしは、本棚から本を取らずにいつもの席についた。
なんだか急に、読みもしない本を開くのが面倒になってしまった。
木南くんのとなりで、音楽室のカノンと彼がページをめくる音をぼんやりと聞いていた。
少しして、木南くんが栞を挟んだ本を机に残したまま、どこかへ行ってしまった。
どこに行ったのかな……、そう思っていると、背後から伸びた手がわたしの前に一冊の本を置いた。
それは、いつも彼が読んでいる推理小説シリーズの中の一冊だった。
驚いて振り返ると、木南くんが立っていた。
彼は何も言わず元の席に座って、本の続きを読み始める。
わたしは何度か目の前の本と木南くんを交互に見たあと口を開いた。
「これ……、面白いの?」
木南くんは、推理小説に視線を落としたまま小さく頷いた。
わたしはつい、笑ってしまった。
だって……、とても嬉しかったから。
木南くんがわたしのために、本を選んでくれたことが。
わたしはその本を大事に持って、最初のページをめくった。
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