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 白いチョークが、黒板にわたしの名前を描いた。  その前で佇むわたしは、視線を向ける先を必死に探す。  わたしを見つめるたくさんの好奇な目が、怖くて仕方がなかった。 「みんなに挨拶しようか」  先生にそう言われて震える唇を開くけれど、声は出ない。  そして震えは、唇から全身へと広がった。 「今日から新しくクラスメイトになるから、みんな仲良くしてあげてね」  わたしの事情を知っている先生が、代わりにそう言ってくれた。 「じゃあ木南くんのとなりが空いてるから、そこに座ってくれるかな」  先生が指差したほうへ、逃げるように向かう。  くすくす、  小さな笑い声が聞こえた。  はやくこの空気に溶けてしまいたくて、わたしはポツンと空いたその席に勢いよく腰をかけた。
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