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 それから休み時間のたびに、興味津々な目をしたクラスメイトがわたしに声をかけてきた。 「どうして転校したの?」 「友達と離れるの、寂しくなかった?」  そんな答えられない質問に、わたしは曖昧に頷くだけだった。  昼休みになって、誰かと話すのが苦痛だったわたしは一人で教室を出た。  校庭でサッカーをする男子たち、教室で恋愛話に花を咲かせる女子たち……  そんな彼らを横目に見ながら廊下を歩いていると、図書室を見つけた。  ここなら、一人でも時間をつぶせそうだ……  そう思ったわたしは扉を開けた。  図書室の中には数人の生徒がいて、本棚の前に立って本を選んだり席に座って読書をしている。  わたしも本棚から題名も見ないまま適当に一冊を取って、大きな机に並べられた椅子へと向かった。  そのとき、見覚えのある後ろ姿が目に入った。  背中を丸めて座る、学生服の男の子……  そこに座っているのは、木南くんだった。
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