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 わたしは毎日、昼休みになると図書室へ行くようになった。  最近は、ろくに話もしないわたしに声をかけるクラスメイトもいなくなった。  そのほうが、わたしにとっては気が楽でいいのだけれど。  いつも適当に一冊を選んで、背中を丸めた彼のとなりに座る。  一度だけ、本棚に並んでいる本をじっくりと眺めてみたけれど、わたしにはどの本が面白いのかなんて分からなかった。  今日も、木南くんは推理小説に夢中だ。  わたしたちは会話も交わさず、ただ並んで本を広げた。  音楽室で誰かが弾くカノン、木南くんがページをめくる音……  きっと、世界にはこの二つの音しか存在していないんだ。  本当に、そうだったらいいのに……  白いページを眺めながら、わたしはそう思った。
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