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猫の集会
丸く輪を描き座っている
猫の集会
皆が集まったのか
今始まろうとした時に
通り過ぎていく人たち
たまたま集まりに加わってしまったかのように
その丸い中に入り込んでしまった
トメ子さんだった。
昭和一桁生まれのトメ子さん・・・80代
5匹の猫がトメ子さんの 頭からつま先までじっと眺めた
猫が苦手のトメ子さんだが
さすがに「場の空気」を読んだ
ボス猫と思わしき丸々太ったブチ猫に
「邪魔したね」といい、その場を去った
年の功と言うべき、とっさの行動だった
トメ子さんはドキドキしながら急いで部屋に帰ってきた
水道の蛇口をひねり コップに一杯、水を飲みほした
初めて猫に言葉をかけたトメ子さんだった・・・
5匹の猫はトメ子さんの後姿を見送った後に集会を始めた
議題は最近引っ越してきた「101号室のベランダ」についてだった
ボス猫が格好の寝床にしていた101号室のベランダ・・・
新しい住人はどうやら猫が嫌いらしい
毎朝、一番鳥の鳴く頃に、そっとレースのカーテンから
ボス猫の寝ている姿を確かめては
野太い声で「フォッ」と声を出して脅すのである
あわてふためきヨロケテ、猫避けに置いてある水道水が2リットル入ったペットボトルを倒してベランダから退散していたボス猫だった
その後「101号室のベランダには行くのはやめる」と
仲間の猫達に決意表明して新しい寝床を探したボス猫だったがどうも寝付かれない。
あわてたボス猫は101号室のベランダに大事な座布団を忘れてきてしまったのだ。
ボス猫は「今夜、自分だけで大事な座布団を取りに行く!今夜、最後にもう一度だけあの101号室のベランダへ行く」と仲間に告げ解散した。
ボス猫は「101号室のベランダ最後の夜」を馴染んだ角度で座布団の上に丸くなって
しばらく、まどろんでいた
夜も鎮まり満月がオレンヂ色に輝いていた
オレンヂ色の光が101号室の窓に反射していた
すると窓の中のレースのカーテンが微かに揺れた
そこにはトメ子さんがいた
ボス猫とトメ子さんの目があった
ボス猫が首を素早く回して大事な座布団の端をしっかりとくわえたのと同時に
「おかえり」とトメ子さんの声がボス猫の耳に確かに届いた
しばらく時が止まったかのようにボス猫とトメ子さんは思えた
月は角度を変えながらも優しく
101号室のベランダを照らし続けていた
ボス猫は座布団の端をペロペロと舐めて、丸くなって目を閉じた
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