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「で、でも、『ケータイ』はタケルにとって、大切な物でしょう!? これがなかったら、タケルは元の世界に戻れないんだよ!?」
まるで自分の事のようにムキになるリアの瞳を、タケルは真っ直ぐ見詰めた。
「分かってる」
「分かってないよ。全然分かってない!
『ミサキ』にも、もう二度と会えなくなるんだよ!?」
語気を荒げて詰め寄るリアの言葉に、タケルは自分の世界で初めてできたガールフレンドの面影を思い浮かべた。
懐かしさが胸を過ぎる。
でもそれは、例えるなら兄が妹を思うような肉親の情に近く、恋い焦がれると言う感情にはほど遠い事に、タケルは気付いていた。
今のタケルにとって一番大切な物は、一緒に旅をしてきた仲間達であり、目の前で自分のためにムキになってくれる、この猫目の少女だった。
「リア、やってくれ」
タケルの決意に満ちた黒い瞳には、何の迷いもなかった。
―了―
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