0人が本棚に入れています
本棚に追加
この携帯電話だけが、二つの世界を繋ぐ唯一の形代で、
これがなければ『竜の目』を見つけ出せたとしても、時空の扉は開かれない。
帰りたい。
家族が、友人が、
自分を育んできた全てが在る、
あの世界へ。
それだけを支えに、この戦乱の異世界を旅してきたのだ。
でも。
「タケル……」
心配げなリアの声に、タケルはゆっくりと顔を上げた。
「これを使おう、リア」
携帯電話を差し出したタケルを、リアが驚きの眼差しで見詰めている。
猫族の特徴を一番顕著に受け継いだ、大きなエメラルド・グリーンの瞳が、薄闇の中で一瞬、キラリと輝きを放つ。
最初のコメントを投稿しよう!