遠い異世界の片隅で

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この携帯電話だけが、二つの世界を繋ぐ唯一の形代で、 これがなければ『竜の目』を見つけ出せたとしても、時空の扉は開かれない。 帰りたい。 家族が、友人が、 自分を育んできた全てが在る、 あの世界へ。 それだけを支えに、この戦乱の異世界を旅してきたのだ。 でも。 「タケル……」 心配げなリアの声に、タケルはゆっくりと顔を上げた。 「これを使おう、リア」 携帯電話を差し出したタケルを、リアが驚きの眼差しで見詰めている。 猫族の特徴を一番顕著に受け継いだ、大きなエメラルド・グリーンの瞳が、薄闇の中で一瞬、キラリと輝きを放つ。
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