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一面のオレンジの色彩が、網膜を焼く。
海を見下ろす崖の展望台には、私達の他は人影はない。
私は眩しさに思わず目を細めて、そのオレンジに染まる海をを背景にポツリと佇む人影を見詰めた。
展望台の白いフェンスに肘を付いて、やはり眩しげに目を細めながら煙草を燻らせる彼の姿は、いつもと変わらず『のほほん』としていて、緊張している様子は見られない。
寄せては返す波のリフレインに励まされるように私は口を開いた。
「もう、猫を被る必要はないわよね?」
私のセリフに、彼は軽く肩をすくめてツイっと視線を外し、オレンジからコバルトブルーに変わりつつある海を見詰めた。
その横顔に、ふっと寂しさが滲んだような気がした。
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