五里霧中編_拾弐

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  ふー、と息を吐き出し、もう一度気持ちを奮い立たせる。 「父は祖父母にとって、 唯一の男の子どもで最後の子でした。 特別な存在だった、 と伯母が話していたのを覚えています。 私の前で口にすることはありませんでしたが 祖母は病床で夢うつつの中、 信二(シンジ)、と父の名を何度も呼んでいました。 祖父がそんな祖母を見かねて、 何度も何度も父に顔を見せに来るように 電話で頼んでいたのを覚えています。」
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