君のそばに、いるだけで。

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私が彼と付き合って、二年目の事だった。 彼から電話をもらったのだ。 というのも、携帯電話をプレゼントされたのではく、家電を繋いだ訳でもない。 だいたい彼とは結婚もしてないので、家電なんてどこに繋ぐんだ。 普通に考えれば、私の電話に彼からの着信があったと受け止めるだろう。 ていうか、それが普通でしょう。 それが、普通じゃないから、思考回路をぶっとばしてまで、私は混乱しているんだ。 ……この、鳴りっぱなしの携帯電話、どうしよう? お気に入りの着信音は、彼専用で。 鳴り始めると勝手に起動する、深海から水面を見上げるような深い蒼と、柔らかな光のスマホの画面も、彼専用。 付き合ってから二年。 着信設定をしてから初めて聴いたメロディと、忘れかけていた専用画面。 だって、私の彼は喋らないから。 無口だなんて、その言葉、漢字の通りに。 まるで彼には口が無いみたい。
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