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ちょっとじれったくなって、私からぎゅっと抱きついたこともあった。
彼は驚いて、しりもちをついたっけ。
それでも、彼は声をあげなかったけど。
わっ!……とか。えっ?……とか。そういうのもないのが、無口なの?
それでも、彼が驚いてることも、緊張してることも、伝わってくるから不思議ね。
ドキドキしてる心臓の音、とか。
急に体温があがって汗ばむ顔とか。
まばたきを繰り返す両目。
口を引き結んでるのに、なぜか間抜けな顔で。
彼の隣にいるのは、とても心地いい。
彼もドキドキしてるけど、私もおなじなんだよ。
手を繋げば肩に力が入るし、急に腕を掴まれて引っ張られたら心臓が止まりそうになるし。
抱き締められたら、心臓は強く音を打ち鳴らすのに、不思議と力が抜けていく。
ただ、隣にいるだけ。
そばに、いるだけ。
でもそれだけで、いいの。
まるで音の無い、深海のよう。
まるで音の無い、宇宙のよう。
だから彼専用の待ち受けが、深海の色。
私のイメージだけど、間違いないよ。
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