君のそばに、いるだけで。

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しばらくの間を置いて、なにも聞こえないスマホの画面を確認したりして、また耳に押し当てる動作を繰り返した。 「……もし、もし?」 間違い電話とかじゃ、ないよね? 彼で、間違いないよ、ね? 不安になってきて、喉からか細い声がでる。 果たして、電話口から聞こえた彼の第一声は。 『……こっ、子どもは三人欲しい……っ』 …………はい? 想像してたより、低い声。 早口で、固い滑舌。 予想の遥か斜め上を飛んでいった、内容。 電話なんだから"もしもし"から始めようよ、とか。 名前を呼んでくれたら嬉しいな、とか。 デートの約束かな、とか。 むしろ二年の付き合いにして、今この瞬間が"初めまして"でもいいって思ってた、とか。 私達まだ、入籍もしてないよね? プロポーズも、まだなのに……。 もっと他に、言うことあるでしょ!? ……っていう様々な突っ込みは、たぶん彼の頭のなかでも再生されていると、思うので。
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