第一章 間宮里未の心酔

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第一章 間宮里未の心酔

…私、車に轢かれて…それから…どうなったんだっけ。 私の目の前に広がるのは知らない家の天井。 ここは、どこだろう…。 あの青年は何だったの? 自分では何一つ答えが出せない。 「あ、起きたみたいだね」 「きゃあぁぁっ!?」 「あ、だめだよ!そんな大声だしたら。そんなことないと思うけどもし誰か通ったら外に聞こえちゃうよ」 「え?…何…だれ…?」 急に声をかけられて驚いて悲鳴が出るが、相手に慌てて抑えられ自分で口を覆う。 肩の力を抜けず固まった身体をジロジロ見られてしまう。 「ふっ…びっくりさせてごめんね。僕の名前は桐生卓人。知ってるかな。で、ここは君の住んでる町からは少し遠いところ、さらに言えば山奥で…僕の今の家。…さぁ、いま君に起きている状況がもう分かってるんじゃないかな?」  桐生卓人。 当たり前だ。その名前を知らない人はたぶん居ない…世間知らずでなければ。 それはつまり…私は誘拐か何かをされたということだろう。 私は桐生を見つめ返す。 どうしてだろう…怖いはずだったのに、すごく冷静で居られる。 桐生は一切、目を逸らさない私を見て、困ったように顔を歪めた。 「間宮さん、怖くないの?今の状況、分かってる?」  もちろん、分かっている。 今の状況が理解出来ないほど私は馬鹿ではない。 だけど、なぜだろう…目の前の人は普通にしてたらモテるだろう優男なイケメンで、怖い感じがしないからだろうか。 自分でも驚くほど、落ち着いていたのだ。 「私、あなたに車で体当たりされたんだよね。身体が逆さになって吹っ飛ぶほど…なんで、わざわざそんなこと…誘拐するなら車に押し込めばいいじゃない…」 疑問だった。 「…いい度胸してるよね、間宮さんって。…間宮さん、僕と行動を共にする気はない?」 「え?」 質問の答えを期待したのに、全くの見当違いで、その聞こえた言葉を疑った。 「うん、当然の反応だね」 「あっ、待ってよ、さっきの答え聞いてない!」 「せっかちって言われない?答えるから聞いてて。…ただ誘拐するだけだと暴れられたり声を出されたりして上手くいかないことを知ってるから死なない体当たりで気を失ってもらうのが僕のやり方。本当は都合のいい人間、見つけて誘拐して長時間、恐怖に震える人間を監禁してじっくり殺そうと思っていたんだけどね…間宮さんには出来なかったよ。どうやら、僕は気に入ったみたいなんだ、間宮さんの強情さと目にね。もちろん、それだけじゃないよ。初めてだよ、人間を生かしておきたいと思ったのは。僕と一緒に来る気ない?」
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