六夜

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下拵えをしながら、どんな神様が来るのかな、何が好物なんだろう、と考える。 それから、お地蔵さんも来るし、まりちゃんも紹介しておいた方がいいだろうから、米をといでしばらく水を吸わせる。 まりちゃん用は、なるべく土鍋で炊く。 うちの炊飯器がかなりの年代物のせいもあるけれど、土鍋で炊いた方が美味しく感じるから。 いい子で滅多に出てこないまりちゃんの好物は、何の変哲もない塩むすび。 だからこそ、少しでも美味しく食べて欲しい。 開店準備をして、暖簾を手に取ると、いつもよりほんの少し早いヤタの羽音。 「ヤタ。早いな、今夜は。」 外に顔を出して声をかけると。 「ぎゃあ!本日は、畏れ多い方々がこのような下々のものしか使わぬところに降臨なさるのだ!ご無礼があってはならんぞ!」 今のところ、おまえが一番無礼だよ、ヤタ。
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