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きいを追いかけ家を出ようとすると、陽兄に腕をひかれて、制される。
「女の子1人で帰らせたら危ない…っ」
「1人なんていってないだろうが。人の話をちゃんと聞け。友達が迎えに来てるはずだよ。そんなに心配なら一緒に行こう。」
何故か、陽兄は真剣な顔をして、俺の腕を離さないまま、一緒に玄関を出た。
家の前に止まっている車にきいが丁度乗り込むところで、俺は、迎えに来てくれた友達に頭を下げて、きいに手を振った。
きいは俺達をみて、また何か言いたそうだったけど、手を振りかえしてくれた。
「なんで引き止めたの」
きいがいなくなった後、家の中に入る前に陽兄に聞いた。
「お前は優しいが、優しすぎるとそれは逆に人を苦しめることになることもあるんだ。」
頭にポンッと手を置かれそのまま撫でられた。
「それと、」
気恥ずかしそうに陽兄は顔をかきながらまだ何かいいたげで。なに?と聞き返すと、顔を真っ赤にしながら
「お兄様は…その、なんだ。お前がいるから、お見合いなんてしないから、安心しろ」
なんてことを言う。
陽兄が気を遣ってそんなことをいっているのは分かっているが、その言葉に素直に嬉しくなって、俺はバカじゃないの、と笑った。
今日も日向家は平和であった。
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