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「え~?なぁにぃ?」
そんな睨まなくってもいいのに。怒られるようなことした覚えなんてないんだけどなぁ。
「いつまでヒロにいの前で、それ、してんの?」
「それって、なにぃ?」
首を傾げると、涼くんは、諦めたような溜息を吐いた。失礼な。
「……全部できるくせに、なんでわざわざできない振りをするんだ?お前がそんなんだからヒロにいはいつまでも、どこまでもお前に甘い。」
昨日だって、お前髪拭いてもらってただろ、なんて嫉妬むき出しでそんなことを言われてもなぁ。
「だからだよ」
流石涼くん。わかってんじゃん。僕のこと。
ヒロにいがいないと何も出来ない弟を演じれば、ヒロにいが僕から離れることはないでしょ?
使命感でもいい。ただヒロにいの一番でいたいだけ。
ヒロにいの一番でいるために、僕はヒロにいがいなくちゃダメな弟にならくちゃいけない。だって、
そうでないと、すぐにどこかにいっちゃうから。
…あー思い出すとまだムカムカする。
あの人達は、ヒロ兄にお見合いなんて、ほんとにくだらない物を押しつけてきて。
あのときは、ほんとに焦っちゃった。それと同時に、再認識させられたよね。『結婚』なんてもので、ヒロにいは簡単にどこかに消えてしまうかもしれないって。
だからこそ、慎重に、ヒロにいを縛り付ける必要があるよね。
「ねぇ、涼くんは、僕がヒロにいに依存しすぎって言いたいんだよね?できるのにしないのがムカつくんだよね??でもね。涼くん。案外依存してるのはヒロ兄だったりするかもよぉ?」
そう言って、頬笑めば、涼くんは、僕を少し哀れむような目で見た。
「お気楽な頭だな。」
「ふはっ、そうかもねぇ。」
ほらまたそうやって1人、自分は何も望んでないような顔してさ。知ってるよ、僕。僕ら双子なの、忘れてないよね?
あーあ
ほんとは僕が羨ましくて仕方ないくせに。
なんでもできるフリなんかするから、甘えたいのに甘えられなくなっちゃってさぁ。
涼くんがさっき僕に向けてきた目を、そっくりそのまま、涼くんに返してあげるよ。
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