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「翔、お前また人参残してる……。好き嫌いしちゃダメだろ?」
「うーー。嫌いなのに。でも、ヒロにぃが食べさせてくれたら、頑張って食べる」
いつもの食事風景。ヒロにぃは僕が人参を大嫌いだと思い込んでいるから、好き嫌いしないようにって、最近は毎日のように人参を使った料理を夕食に出してくる。
人参なんて別に好きでも嫌いでもなくって、まあでも好き好んで食べたいわけじゃないけどね。
ヒロにぃが咥えたお箸で僕の人参を掴んで、口の中に挿れてくるときに、ぎゅっと目をつむって、嚥下する。
そうすると、大嫌いな人参を頑張って食べたように見えて、ほらみてみて、ヒロにぃ嬉しさのあまり涙目になってる。
ほんと、食べちゃいたいくらいかわいい。
僕には可愛い可愛いいってるけど、ほんと無自覚なんだよなぁこの人。
いまだって、あーん、っていいながら僕に人参を食べさせるあたり超絶かわいすぎる。死ねるレベルで。
「おいしい?」
なんて聞かれたら、
「うん!ヒロにぃが食べさせてくれたから、嫌いな人参もおいしかったぁ」
そういいながら、僕がヒロにぃに甘えると、黙ってられない人達がついに声をだし始めて、うるさくなりはじめた。
「翔、貴様良い度胸じゃねぇか。もう見てらんねぇ!ヒロから離れろ!」
「ちょっと、翔。いい加減にしてよ。迷惑なんだけど。」
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