双子の策略 ~翔~

10/19
前へ
/61ページ
次へ
ヒロ兄を抱きしめながら、昔は逆だったなと、懐かしむ。 ***** 今は涼君と僕の見分けが誰でもできるように、髪形を変えたり、しゃべり方も変えているけど、昔は違った。 僕がまだ小学5年生のころだ。 今のような、そんな器用な生き方はできなくて、いつも、”自分”の存在が、なんなのかわからなかった。 僕が居なくても、僕と似ている、涼くんがいれば、家族も友達も、気づかないんじゃないかって。僕が居てもいなくても、変わらないんじゃないかって、そう思ってた。 だから、試してみたんだ。家族を。 僕は、学校を早退して、涼くんのふりをして家に帰ったんだ。 涼くんには、少し頼み事をしてきたから、涼くんが帰宅するのは18時くらいになる。 「…ただいま。」 綺麗に靴を揃えて、誰もまだ帰ってきていない家に帰りを知らせる。 心臓はやけに落ち着いていた。 もし、ヒロにいが、僕を涼くんだと言ったら。そんな不安を抱きながら、僕はヒロにいの帰りを待った。 涼くんの服を借りて、見た目は、僕が認めるくらいに涼くんだった。 ガチャリと玄関が開く音が聞こえた。 「ただいま・・・って、ん?涼が帰ってきてるの?」 ヒロにいの声が聞こえてきた。僕は、涼くんになって、ヒロにいを迎える。 「おかえりなさい。」
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1266人が本棚に入れています
本棚に追加