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ヒロにいに飛びつきたい欲を抑えながら、迎える。僕を目にしたヒロにいは、クスリと笑みをこぼしながら、
「なにやってるの。翔。いたずら?」
なんて言って、
「……え、何言ってるの。涼だけど」
と苦し紛れに返すと、ヒロにいは、僕の頭を撫でた。
「陽兄にも健にも、聞いてみ」
それだけ言って、ヒロにいは、夜ご飯の支度を始めた。
少しずつ、沈んでいた気持ちが浮上する。
僕が存在していると感じることができる。
だが、心の中にはそれはヒロにいだから分かったんだと、思う僕がいた。
他の家族には分かりっこない。
特に、健君とはそんなに仲良くないし………。
そんな風に考えながら一人玄関前にポツリ考えてるとすぐに、玄関が無遠慮に開いた。
「たっだいま~!おっ!紘帰ってきてるじゃん!」
中学の制服をだらしなく着崩した、三男が上機嫌で帰ってきた。
健君は玄関先にいた僕と目が合うと、
「なにやってんだ翔、お前服のセンス変わった?」
なんていう。え、目をつけるところそこ??
「…涼だけど」
なんて、言ってはみるが、健君は鼻で笑って、ヒロ兄のところに駆けていった。
「陽兄もそろそろ帰ってくるよ~」
キッチンからヒロ兄がどこか楽しそうに声を張り上げる。
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