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ーーーー翔は緊張をしていた。
なんだかんだ言っても、日向家兄弟は家族で、ヒロにいだけに認めてもらいたいだなんてのは建前に過ぎなかった。
家族に、知ってほしかった。自分の存在を認めて欲しかった。
ただ、今考えると彼らが、翔と涼を呼び間違えることはあれど、間違えることはなかった。
今までのことを思い出して、急に自分がいまやっていることが、なんだかダサくて恥ずかしくなる。
ーーーなんだ、「双子」という言葉に固執してたのは、僕だったのか。
クラスメイトや先先に名前を間違われたり、涼を好きだという女の子には、涼だと思い込まれたまま告白されたりして、それが積み重なって、自分の存在が分からなくなった。
『どっちも変わらないじゃん』
そんなことをいう人もいた。
間違われるのは嫌だ。僕は僕なんだ。涼くんじゃない。
何度も思った。だけど、それを口にして出すことはなかった
涼は気にもとめていない様子であったが翔はそれが不思議でならなかった。自分はこんなに考えているのに。
今日、少し話してみよう。
翔は静かに決めた。
お馬鹿な長兄もそろそろ帰ってくる。
これはまた一ヶ月くらいはうざ絡みしてきそうだなと、苦い顔を浮かべながら、今更どうしようもないので、玄関で帰りを待つ。
そして、数分後、ドアノブがガチャリと回った。
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