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嗚呼。
なんでこうなるんだろう。
この人と話すと、肝心なことを忘れていつも突っかかってしまう。
彼が何を覚えているのか、ちゃんと聞くつもりだったのに。
『帰る』と言った手前、留まるわけにもいかず踵を返そうとしたけれど、彼がめんどくさそうに溜息をつきながら、本題を切り出した。
「酒飲みだしたところから、記憶が飛び飛びで殆ど覚えてねぇ」
そのセリフを聞いて、やっぱりな、と納得して。
何故か少し、胸が痛む。
この痛みの理由を、今は考えたくはない。
「初っ端から殆ど覚えてないってことね」
「起きたら自分の家で一人で寝てた」
「私の方こそ聞きたかったんだけど。ワインの営業のくせにあんなにアルコールに弱くて大丈夫なの」
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